陶芸穴窯製作の記録−穴窯陶芸家−焼き締め陶芸家−群馬県榛名山麓に穴窯築窯−古谷道生−穴窯築窯と焼成

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〜 穴窯製作の記録 〜

穴窯築窯(設計、築窯材料の手配、施工)の全てを自らの手で行いました。ここに穴窯築窯の様子をご紹介します。

陶芸ギャラリー

群馬県高崎市在住の

陶芸家

 陶芸穴窯製作の様子をご紹介します。穴窯製作に最も役立ったのは、古谷道生著「穴窯 - 築窯と焼成」(理工学社)の本でした。古谷道生氏は信楽焼き(しがらきやき)の名工で、30基もの穴窯を作った伝説の陶芸家です。残念ながら54歳の若さで亡くなられています。

 とても良い本でした。難しい言葉や表現は使わず、本人の体験や知識を切切と書いています。古谷道生氏が自らの秘伝を公開くださったことに感謝と敬意を表します。

 穴窯を製作した群馬県は陶芸があまり盛んでないため、築窯材料の入手が難しい地域です。そのため、古谷道生氏と同じには出来ない事も多くありました。いくつかの穴窯を見学したり、自分なりに考えながら穴窯を完成させました。その様子をご紹介します。

 製作風景

製作風景1

着工前の穴窯建設予定地。群馬県高崎市の郊外(旧榛名町)です。

斜面の勾配は窯床の勾配とほぼ同じにしています。

製作風景2

窯が雨に濡れないように屋根が必要です。

これは大工さんに頼んで建ててもらいました。窯から火が吹くこともあるので燃えないように梁は太い木材を使いました。鉄骨で建てる方が安全かもしれません。

製作風景3

窯造りは基礎の掘削から始めます。

アーチ部基礎はしっかり造りたいので深く掘っています。

穴窯の内側寸法は最大幅2.1m、奥行き4mで設計しました。

製作風景4

アーチ部基礎に、熱に強い砂(珪砂)を敷きます。

陶器の破片等も砕いて入れて突き固めます。

製作風景5

珪砂の上にベースを造り、この上から耐火煉瓦を積みます。

ベースにはキャスタブル(セメントのようなもの、硬化すると耐火煉瓦と同様になる)を用いました。古谷道生氏は基礎部(一番下の煉瓦)に大型煉瓦を使っていますが、大型の耐火煉瓦は値段が高いので使いませんでした。施工性や経済性からも現在はキャスタブルでベースを造るのが最適と思います。

製作風景6

アーチ部基礎に続いて窯床を造ります。

当地域の土は熱に弱いので窯床も手が抜けません。アーチ部と同様に珪砂を敷いてからキャスタブルで薄くベースを造り、その上に耐火煉瓦を2段並べていきます。

製作風景7

窯床を階段状に造っていきます。

アーチ部基礎と窯床を別けずに、まず、窯床を造り、その上にアーチの煉瓦を積む造り方もあるようですが、古谷道生氏の本に習い、アーチ基礎を別けて造りました。この方が丈夫な窯になると思います。

製作風景8

こつこつと造っていきます。

アーチ部基礎と窯床を造る作業は意外と大変です。耐火煉瓦も1,000個程使います。なお、耐火煉瓦は全てSK32を使いました。

ここまでは全て標準の並型耐火煉瓦を使っています。煉瓦と煉瓦の間には耐火モルタルを敷いています。

製作風景9

アーチ部基礎と窯床が出来ましたら、出入り口のアーチを作ります。

出入り口のアーチを造るには型枠を用いました。

製作風景10

出入り口のアーチを積みます。

出入り口が垂直になるように煉瓦を積みましたが、少し内側に傾けた方が良かったように思います。

製作風景11

窯の全体像が見えてきました。

アーチの基礎より上は「縦ゼリ型」(T1、T2、T3の種類があります)の耐火煉瓦を積みました。

「縦ゼリ型煉瓦」は「並型煉瓦」より割り高ですが、作業効率を考えて「縦ゼリ型煉瓦」を使うべきと判断しました。

製作風景12

基礎部と出入り口が決まったところで、竹を使ってアーチを作ります。

ここで窯の大きさ、形が決まるのでとても大事な作業です。

この作業はひとりでは出来ません。出来れば4人程必要と思います。

高崎市の「アトリエ異人館」陶芸同好会のメンバーに手伝っていただきました。皆様ありがとうございました。

製作風景13

竹でアーチを形成していきます。竹と竹の交差部を紐で結ぶと頑丈になます。

お手伝いありがとうございました。

製作風景14

流線型のドームが竹で出来ました。

竹を利用するのはとても良い方法に思いました。

製作風景15

後は、この竹に沿って耐火煉瓦を積みます。

アーチ部の煉瓦は全てT1またはT2の縦ゼリ型耐火煉瓦を用いました。これにより、竹に沿って楽に煉瓦を積むことが出来ました。

製作風景16

耐火煉瓦と耐火煉瓦の間には耐火モルタルを敷きます。煉瓦屋さんに言わせると、耐火モルタルの消費量が少ない方がうまい積み方のようです。

製作風景17

このころは煉瓦積みが最も楽しいです。竹から離れないよう煉瓦を積んできます。

製作風景18

作業効率と経済性を考えて、耐火煉瓦の切断は出来る限り行いませんでした。したがって、どうしても煉瓦間の水平方向に大きな隙間の生じる箇所が発生します。大きな隙間にはキャスタブルを詰めました。

ただ、窯を壊す時の事を考えると、キャスタブルはあまり使わない方がよいのでしょう。

製作風景19

あと少しですが、ここからが、煉瓦を上手く積むのが面倒でした。

製作風景20

窯本体の煉瓦が積み上がりました。耐火煉瓦は約3,000個使いました。

窯には出入り口の他、後方に開口部を設ける場合が多いです。横焚き用の穴や、窯の様子を見るための穴です。

少人数での窯焚きを予定していますので、横焚きは不可能であり、また、温度計を設置するのでそれ以外の穴は不要と判断しました。でも、後方に小さな穴を1箇所開けておくべきだったか・・と思っています。

製作風景21

どうしても煉瓦間が大きく開く場所が出ます。ここにもキャスタブルを積めます。

キャスタブルも熱で膨張しますから、キャスタブルを大量に使う場合は目地(または継目)を考慮する必要があります。

製作風景22

耐火煉瓦が積み上がった後、しばらく放置して落ち着いているのを確認してから、煉瓦の上に土を塗ります。

窯土と呼ばれるものを塗るのですが、当地域では窯土が入手できないため、普通の陶芸土と砂を使いました。

製作風景23

余ったり、削りくずの陶芸土を安価で譲ってもらい、これに3倍くらいの砂を混ぜ、水を加えてドロドロにします。これをバケツで窯の上からかけました。

塗りにくい部分は陶芸土の代わりに耐火モルタルを使いました。

古谷道生さんの本では「凸凹を修正するため」に土を塗ると書かれていますが、「土を塗らないと窯の燃焼温度が上昇しない」と言う人もいます。真意は分かりません。

製作風景24

窯の後ろから煙道を2.5m程伸ばして煙突を設置しました。

燃焼効率は温度差で決まりますから、煙突は高い方が良いのですが、燃焼効率と窯の温度上昇は違います。煙突の高さや太さをどの様に決めたら良いのか分かりませんでした。知っている方がいましたら教えて下さい。

古谷道生氏は煙突に陶管を利用していますが、現在では陶管の入手が難しいようです。煙突も耐火煉瓦を用いて作りました。

製作風景25

空焚きの様子です。これで耐火煉瓦の内側に残っている竹を燃やします。

製作風景26

窯内側の目地(耐火モルタルのはみ出したもの)を掃除して出来上がりです。

出来上がった窯の内部です。当初の設計寸法より若干大きくなってしまいました。

 私は古典的でシンプルな穴窯を製作しました。この様な古典的な窯を造り焼成したかったのです。ただし、この窯で作品を焼成するには、少なくとも丸4日間程が必要となり、窯焚きには大量の赤松の薪も必要となります。

 栃木県の益子町に、EUAN CRAIG(ユアン クレイグ)というオーストラリアから来た陶芸作家がいます。EUANは端材・廃材を使い短時間で焚ける窯をデザインして建てています。さすが、日本人とは発想が違います。EUANは窯や焼成方法をとても研究していて、環境に優しい塩釉焼成も考案しています。海外の陶芸雑誌に投稿し、その窯の築窯と焼成指導に世界中へ行っていると聞きました。経済的、かつ、環境に優しい陶芸窯なのです。これからの時代はこの様な発想も必要でしょう。「薪窯で焼成したいが、穴窯や登り窯では大変」という方は是非参考にして欲しいと思い、ここに紹介しておきます。

  

 2011年3月11日の東日本大震災と原発事故の後、EUAN CRAIG(ユアン クレイグ)は群馬県のみなかみ町へ移転しました。

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